医学が発達し医療制度が充実しているはずの現代においても、
要介護者が一人出ると家族崩壊にもつながりかねません。
そして老人だけが身体に気を付けていれば良いわけではなく、
若い人達の中にも、将来の体調・健康が心配な方々がたくさん
いらっしゃいます。
養生訓の中で貝原益軒は、老子の言葉「命在我、不在天」(健康は
自分の責任である、天命と言って逃げてはいけません)を引用して
養生を勧めています。
養生することは自分のためだけではなく、父母夫妻子供などの家族
や自分の属する社会(会社など)のためでもあります。
総 論 上
人の身は父母を本とし、天地を初とす。
天地父母のめぐみをうけて生まれ、又養われたわが身ならば、私で
あって私の物ではない。天地からの御賜物、父母の残せる身である
から、謹んで良く養い、損ない傷らず、天年(寿命)を長く保つべし。*****
是は人生第一の大切な事である。
人身は至って貴く重く、天下四海にも換えがたい物ではないか。
然しながらこれを養う術を知らず、欲をほしいままにして、身を滅ぼし
命を失う事は愚かの極みである。
命が短ければ、天下四海の富を得ても益は無い。宝の山を前に積ん
でも用は無い。
だから、養生をおこなって長命であるほど大福であり、万福の根本と言っている。
「養生訓」は今から三百年ほど前、江戸時代に貝原益軒が著し庶民に広く読まれました。
ここに使用している「養生訓」は岩波文庫本で、石川 兼校訂のものです。