養生を行うには、まず自分の欲(内欲)と外邪を去るようにと益軒先生は
云っています。この二つはわが身を損なう物だからです。
「内欲」には、飲食の欲、好色の欲、睡眠の欲、言葉を欲しいままにする欲
などがあり、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七つの情志のことである。
「外邪」とは、風・寒・暑・湿の天の四気を云います。
内欲を減らし、外邪を防げば元気を損なわず、病気にならず天から頂いた
寿命を永く保つことができると云っています。
中国の現存する最古の医学書とされている「黄帝内経素問」に、養生の道
の重要性を説明する部分があります。(黄帝内経は春秋戦国時代から前漢
頃に著作されたと云われている。黄帝と医師・岐伯の問答形式で記載されている。)
黄帝が問う、「私は{上古の人は皆百歳になるまでも生き、しかも行動は衰
えたりしてはいなかった}、と聞いている。
ところが、現在の人は五十才になるやならずで動作が衰えてしまう。
これは時代環境が異なっているためなのか、それとも人々が養生の道に
はずれているためなのか。」
岐伯が答える、「上古の人のほとんどは、養生をわきまえ、陰陽の変化の
道理にしたがって生活をととのえ、養生法にのっとって身体を鍛錬する。
このことこそ、人々が自然な寿命を享受して百歳までも生きられる道なのです。
それに反し現在の人は不養生をして、酒を水のようにむさぼり飲み、異常なこと
を平常として生活し、酔っては房事を欲しいままに行い、色欲のおもむくままに
して、精気を使いつくし、真元を消耗し散しつさせてしまいます。
精気を保持する節制を知らずに享楽し、労働と休息に一定の規律がありません。
こんなことだから五十才になるやならずで衰老してしまうのです。
以上のように、2.000年以上前の医学書「黄帝内経」の冒頭に、「養生」道が出てきます。