胃の気を養う
胃の気とは元気の別名なり。沖和の気也。
病甚だしくしても、胃の気ある人は生く。胃の気なきは死す。
胃の気の脈とは、長からず、短からず、遅ならず、数ならず、大ならず、
小ならず、年に応ずる事、中和にしてうるわし。此脉、名づけて言いがたし。
ひとり、心に得べし。
元気衰えざる無病の人の脉かくの如し。是古人の説なり。
養生の人、つねに此脉あらんことをねがふべし。
養生なく気へりたる人は、わかくしても此脉乏し。是病人なり。
病脉のみ有て、胃の気の脉なき人は死す。
又、目に精神ある人は寿し(いのちながし)。精神なき人は夭し(いのちみじかし)。
病人をみるにも此術を用ゆべし。
「黄帝内経素問 経脉別論篇 第二十一」に胃の気について出てきます。
胃は食物を受け入れて消化し、滋養と精気を全身に行き渡らせて健康を保ちます。
その精気の流れが平衡を保っていることが大切で、平衡であるかそうでないかの
確認をするには、気口部位の脈象で診ます。
その結果疾病の死生を判断することが出来るのです。
気口部位(寸口部位とも云う)は左右前腕の橈骨動脉の拍動部で、寸・関・尺の三部に
分けて触診し、五臓六腑の平衡や病変を診察します。
現代医学のように、詳しく検査をして診断をすることが出来なかった昔は、医師が自分の
目で見る・臭いを嗅ぐ・話を聞く・触診の四診しかありませんでした。
その結果漢方では舌診や脈診が特に発展したのです。