陰陽秉衡論 (インヨウヘイコウロン)
「天地の理、陽は一、陰は二也。水は多く火は少し。水はかはきがたく、
火は消えやすし。人は陽類にて少く、禽獸虫魚は陰類にて多し。
此故に陽は少なく陰は多き事、自然の理なり。少なきは貴く多きはいやし。
君子は陽類にて少く、小人は陰類にて多し。
易道は陽を善として貴とび、陰を悪としていやしみ、君子を貴び、小人を
いやしむ。云々・・・・・・・」
貝原益軒先生は、陰と陽を比較すると、陽は一つに対し陰が二つである、
それは天然自然が決めた理(ことわり)である、と仰っておられます。
陰陽の理論は、中国古代の哲学理論の一つで、事物の属性を示す概念。
それが医学に取り入れられてから、中医学理論の重要な支柱となって、
二千年以上の間、中国伝統医学の臨床を指導してきました。
二千年前の医学書、黄帝内経素問の陰陽応象大論には、陰陽五行の道理を
説明し、人体の臓腑氣血、臨床における脈因証治について、具体的な論証
をしている。
その中では、人体の陰陽は相対的なもので、釣り合っているものである。
もし陰気が偏って勝てば、陽気は必ず欠損し、陽気が偏って勝てば、陰気は
必ず欠損する。このような状態になれば、即ち病証が現れることとなります。
中医学の陰陽理論では、人体が健康なときの陰陽は、相対的に釣り合って
いるのです。しかし、陽一陰二の状態は陽虚陰盛という病証であるため、
元気なく寒がりで食欲不振で未消化物を下す、などの症候が出てきます。
江戸時代の人達がみんな陽虚陰盛であったとは思えません。
その当時の、日本の漢方医学の陰陽解釈がそのようであったと理解するしか
ありません。