今から50年ぐらい前の古い話です。
その頃は今のようにカラオケはまだなくて、新宿や渋谷に歌声喫茶(灯など)
がたくさんあって、若者たちが集まっていました。
私も歌が好きだったので友達と良く行っていましたが、ただ大声を上げて歌う
ことに満足できず、ある合唱団に入りました。
パートはテノールで、毎週土曜日に練習に行きました。
ある時、ソプラノのKさんに音楽会を聴きに行こうと誘われました。
放送局のクラシック番組の収録に応募したら二人分切符が当たったのだそうで、もちろんOK!。
梅雨の季節でその日も小雨が降っていました。
有楽町駅から近くのまだ新しいホールでした。
曲はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番。
演奏が始まると生の演奏の迫力に圧倒され引きずり込まれました。
感動の演奏が終わり外に出ました。
皇居前を歩きながら演奏の素晴らしかったことなどを話しました。
そして彼女は急にジューンブライドについて話しはじめました。
自分は六月生まれであること。
だから結婚するなら6月に結婚式を上げたいと思っているなどでした。
彼女は23歳、適齢期でした。
私はまだ22歳で生活も安定せず、将来の目標も立てられなくていましたから
その期待にお答えすることはできませんでした。
素晴らしい演奏会で感激したのに、素敵な彼女とはそのままで終わりました。